千葉県木更津市請西南のお花屋~フラワーショップ「エールフラワーズ」。 お花農家や市場より直送された品質のよい花々をお客様のお手元へ

2016.04.26

フラワーエッセイ

フラワーエッセイ

カーネーション……母と子を繋ぐ花。

都築隆広

  母の日にカーネーションを贈るという習慣は、いつから始まったのだろう?

◎ ◎ ◎
 
 一九〇七年のアメリカ――。
 フィラデルフィアの教会でアンナ・ジャービスという女性が、自分の母の命日に、生前、彼女が好きだった白いカーネーションを、礼拝に訪れた人達に配ったという出来事がある。
 これがどうも、母の日の発端だといわれている。
 その出来事がおそらく、広く影響があったのだろう。
七年後、アメリカ政府は五月の第二日曜日を母の日にすることに決めた。この時、アンナ・ジャービスの逸話から、母親がいる人は赤いカーネーションを、いない人は白いカーネーションを胸につけるようになったという。

 国家が政令で決めたというのは驚きだが、白いカーネーションの方が当初は注目を集めていたというのも意外だった。
日本では「親孝行、したいときに親は無し」という、ことわざもある。
 親が健在なときに赤いカーネーションを贈れて、感謝をあらわせればいうことはないだろう。
しかし、人生とはそう上手くもいくとは限らないし、世の中、幸福で健康な人ばかりではない。
会えなくなった親に花を贈りたいと願う人々の心の方が、もしかしたら真摯で純朴な感情のような気もする。

◎ ◎ ◎

  カーネーションはナデシコ科の多年草。
 名は十六世紀にイギリスの詩人、スペンサーがこの花のことを「コロネーション」と呼んだことに由来する。
これには諸説あって、花冠を編むのに適していたことからラテン語の「corona」から来ているとも、赤いので肉を意味する「coro」から来ているともいわれる。
 原産地は地中海沿岸地方。古代ギリシャから栽培されていたといわれ、紀元前にカエサルの兵がヨーロッパに持ち込んだという説もある。
 また、十字架にかけられる前のキリストを見た聖母マリアの涙の跡から生まれた花という伝承もあって、母の日に贈る花になったという話もある。
 十七世紀になるとフランスやイギリスで品種改良が行われ、ルイ十四世のベルサイユ宮殿には既に三百種類ものカーネーションが植えられていたともいわれる。
観賞用以外にも、ワインに花びら浮かべて香りづけや香水など様々な用途で使われ出した。

◎ ◎ ◎

 日本にも江戸時代に伝わり、 「オランダセキチク」いう和名がついた。
 そもそも、温室にて育てる植物のようで、大正時代になるとガラスの温室が普及し、日本でも大量生産がなされるようになった。
 今や切り花としてはバラ、菊と並ぶ人気で、花屋で見かける花の定番となっている。

◎ ◎ ◎

もちろん、切り花だけではなく、花壇や鉢植えで育てるという楽しみもある。
前述のように、切り花用は温室で栽培されるが、花壇用は春か秋に種をまいて栽培する。
鉢花の場合も、四月頃に購入して、まずは日なたに置き、夏場は涼しいところに移動させるといいだろう。
花が咲いている間には肥料をやらず、水やりの時もデリケートなので、花に水がかからないように注意する。
花が終わったら、茎を半分ほど切ると、また咲いてくる。
九月に鉢替えをして、液体肥料を施す。
母の愛は強し、といったところで、意外に生命力が強くて、繰り返し楽しめる花だ。

◎ ◎ ◎

さて、話題をカーネーションから、母の日に戻そう。
時を経て、大人になった僕は今、母の日のエッセイを書いている。
いい歳をして母親について書くことの気恥ずかしさは隠せないが、四十六歳の若さで子供達を残してこの世を去った母の人生を、偲(しの)ばずにはいられない。
長い闘病生活の最後に、子供達との別れが待っていたかと思うと、年をとるごとにその辛さが身につまされてくる。
そんなことを考えていたとき、花の図鑑を捲っている手がふいに止まった。
それは、花言葉について書かれた頁だった。

『白いカーネーションの花言葉
  私の愛情は生きている。』

傍らには、凛と咲く、白い花の写真が添えられている。
少年の日に探し求めたあの花の意味が、二十年の時を経て、胸に突き刺ささる。
子供を残して逝く母親達の未練と涙……だが、そういった悲しみより大きなものが、その花には託されているのではないだろうか。
カーネーション……それは、母と子とを繋ぐ花。

久々に、母の“声”を聞いた気がした。

カーネーションの花言葉……(赤) 「母への愛」
               (ピンク) 「熱愛の告白」
               (白) 「貞節」「若い娘」 「私の愛情は生きている。」

【参考文献】
「世界大百科事典」平凡社
「日本大百科辞典」小学館
「贈る・楽しむ・誕生花事典」監修 鈴木路子 写真 夏梅陸夫 大泉書店
 「花百物語 100 FLOWER STORIES」
 著 三浦宏之 写真 深川友記
 「園芸店で買った花を枯らさない知恵とコツ
 169種もの鉢花の育て方がひと目でわかる!」 主婦の友社編 主婦の友社
「持ち歩き! 花の辞典 970種 知りたい花の名前がわかる」
 文 金田初代 写真 金田洋一郎 西東社

2016.04.12

白トルコキキョウのホワイトブーケ

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白トルコキキョウとグリーンのホワイトブーケ

ブライダル用に制作致しました。

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