千葉県木更津市請西南のお花屋~フラワーショップ「エールフラワーズ」。 お花農家や市場より直送された品質のよい花々をお客様のお手元へ

2015.08.21

鉢花・観葉かごセット 

業務日記 お花屋さんの店長ブログ


鉢花・観葉植物の詰め合わせセット

ハバネロ・ペチュニア カリブラコア・

鑑賞トウガラシ・ポトス・ストレチア・ベゴニア

をイエロー系のラッピングでバースデーカードを

お付けして配送いたしました。

2015.08.06

フラワーエッセイ

フラワーエッセイ

「プリザーブドフラワー……枯れない魔法の花」

 その日、私が手にしたのは、鮮やかな緑が繁る、ハート型の鉢植え植物である。

 知人へのプレゼント選びで逡巡して入った、一軒の雑貨での出来事だった。
 その植物は遠目には造花のようだが、葉はやわらかな質感だった。
 鉢植えといっても、土はない。
鉢自体が作り物で、茎はテープを巻いたワイヤーでできた作り物だ。
しかし、葉だけが本物なのである。
水につけているわけでもないのにみずみずしく、本物よりも鮮やかなまでの緑色。

どうやら、この鉢植えは“リーフツリー(トピアリー)”という商品であるらしい。
いわゆる、プリザーブドフラワーの一種だ。

 ◎

 プリザーブドフラワーは“永遠に枯れない花”という異名を持つ。
 ドライフラワーの一種にカテゴライズされるが、花びらや葉はみずみずしく、造花と違ってリアルである。
そして、生花と違って水を必要としない。
この「水を必要としない」という要素は大きく、通常のドライフラワー以上に、様々な加工が可能である。
また、“永遠に枯れない花”という肩書きから、「ブリザードフラワー」とよく間違えて覚えられることが多い。ちなみに、筆者も間違えて覚えていた。

 ◎

その歴史はまだ短く、世界で初めてプリザーブドフラワーを作ったのはフランスのVermont社。
植物の樹液を有機保存液(通称、プリザ液)やオーガニック染料と置き換え、組織を完全に保ちながら保存できる「長寿命な切り花の製造技術」として、1991年にパリで発表された。
 私が買ったトピアリーとは、球形や円錐形にしたフローラルフォーム(オアシス)に短く切った花材を挿して、刈り込んで作った木のように見せる商品のことをいう。
 プリザ加工された葉が使われているため、いわゆる“リーフもの”というジャンルに分類される。

 ◎

プリザーブ(preserve)とは、英語で「保存・保護する・防腐処理をする・持続する」という意味である。
 現在、約六十種類の植物がプリザ加工に適しているといわれている。
前述の“リーフもの”は葉っぱなので、プリザードフラワーの中ではあくまで脇役だ。
プリザーブドフラワーの主役として、最も使用される花材はなんといっても、バラやカーネイションであろう。
フレッシュな色艶、豊富なカラーバリエーション。
保存にさえ気をつければ、 長い期間、美しい姿を楽しめる。そのため、インテリアや贈り物としても注目されている。
その他にも、ライム、レモン、オレンジ、栗といったフルーツもプリザ加工することができ、人気である。

 ◎

 プリザーブドフラワーは花屋でアレンジメントされた完成品を購入できるが、近年では生花から作り方を教えてくれる教室も多い。
 簡単な工程は以下の通り。

【プリザーブドフラワーの作り方】 ~バラの場合~

① 花を茎から切り、プリザ液A(アルコールが主成分の脱水・脱色液)に六時間、浸す。
② 色が抜けたら、プリザ液B(着色液)に十二時間以上、浸す。
③ 再び、プリザ液Aに入れて、色落ちしない程度に手早く洗浄する。

これにて完成だが、最近ではこれらの過程を簡略し、漬けておくだけでOKの「らくらくプリザ液」も出ているようである。
また、食品用の真空容器を使うと、漬けておく時間を短縮でき、均一に染色もできる。

 ◎

プリザーブドフラワーは花のみを切断しているため、茎がない。そのため、ワイヤーやテーピングを駆使して、造花風の疑似茎を作る必要がある。
 また、花びらを取り外して角度をつけながら貼り戻せば、好みの大きさに開花できる。
傷んだ花びらを除き、新しい花びらを接着すれば、修繕することも可能だ。

通常のフラワーアレンジメントとは異なり、工作性が強く、クリエイティブな趣味として末永く楽しめるだろう。

 ◎

 クリエイティブといえば、ブーケも自分で作れることだろう。
ウェディングでは青い花を身につけると幸せになれるという「サムシングブルー」伝説がある。長年、実現不可能だった青いバラも、プリザなら着色で簡単に作れてしまう。
近年では、この青いバラのブーケを自作するために、プリザーブドフラワー教室に通う花嫁達も少なくはないと聞く。

 ◎

 そんなプリザにも欠点が幾つか存在する。
 値段が高いこと。
壊れ易いこと。
しかし、なんといっても「永遠に枯れない魔法の花」を謳(うた)うわりには、寿命があり、有限であることだろう。
ヨーロッパでは十年ももつそうだが、湿度の多い日本では二、三年もすれば傷み始めてしまう。

 ◎

 さて、前述のリーフツリー(トピアリー)も、保存期限があるため悩みもしたが、結局、購入することにした。
 花束ならば、枯れる宿命がある。
 ところがプリザーブドフラワーは花と雑貨の中間にあるような存在だ。
プレゼントであげるならば、記念として残るものが良いと考えるのが普通である。

 しかし、こうとも考えられる。
また寿命がきた頃に、また買い直せばいい。

 二年先か三年先かはわからないけれど、そのときもまだ、贈った相手との絆が続いていると信じたい。
もし、仮に傷ついた関係になっていたとしても、修繕する機会を得られる。
花びらが傷めば、交換すればいいのだから。
プリザーブドフラワーはプレゼントを贈る機会を増やせる、稀有な記念品なのである。

                             (了) 都築隆広

【参考文献・資料】
「永遠に咲く魔法の花 プリザーブドフラワー」フォーシーズンズプレス
「手作りプリザーブドフラワー 生花から自分で作る!」
 著 長井睦美 監修 日本バイオフラワー協会 ブティック社
「生花から手作りできるプリザーブドフラワー」 長井睦美 ブティック社
「プリザーブドフラワー・ホーム」 石川妙子 誠文堂新光社

2015.08.02

看板犬 ベリーくん

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